正味現在価値を求める際に利用するNPV関数についてご紹介しました。
そのネタの中で「一般的には」「一般的な」といった表現を何度も繰り返し使ってきました。
NPV関数だけでは、「一般的には」いわゆるNPV(Net Present Value=正味現在価値)は求められませんが、NPV関数だけでNPVを求められるケースもあります。
そんな例をご紹介します。
NPV関数だけでNPVを求めるのですから、計算式は以下のようになります。
※C2セルに割引率、C5セルに初期投資額(支払は1年目の期末)、C6:C8セルに2年目から4年目に生み出されるキャッシュフローが入力されているとき、C10セルに正味現在価値を計算する例 C10セルに
「=NPV(C2,C5:C8)」
という数式を入力する
▼サンプルファイル(003314.xls 38KByte)ダウンロード
サンプルファイルの「NPV関数だけでNPV」シートに、今回のNPV関数だけで正味現在価値を求められるケースを作成してあります。
比較のために、「一般的なNPV」シートにはNPV関数の結果と初期投資額とを合計して正味現在価値を求める、「一般的」と強調してきたケースを作成してあります。
「NPV関数だけでNPV」シートのC10セルに、上記の「=NPV(C2,C5:C8)」というNPV関数だけを使った数式が入力してあります。
日本の(コーポレート)ファイナンスの世界で、こういった計算でOKとされることがあるのかどうか私は残念ながら知りませんが、、このケースならNPV関数だけでNPVが求められます。
Excelのヘルプにもこのような例が「使用例1」として記載されています。
で、、これはどういう状態なのかというと、
初期投資額の支払いが1年目の期末に支払われ
キャッシュフローが生まれるのは2年目以降の期末
という世界です。
E5:E8セルには、PV関数を使って1年ごとのキャッシュフローの現在価値などを計算し、E10セルにはE5:E8を合計して正味現在価値を計算してあります。その結果はNPV関数を使ってNPVを計算しているC10セルと同じです。
PV関数の結果や意味を確認しながら、NPV関数で計算された値の意味をお考えください。
まず注目していただきたいのは、E5セルです。
E5セルには
「=PV($C$2,B5,,-C5)」
という数式が入力してあります。
これは初期投資額を、現在価値に割り引いた値を計算する数式です。
先日ご紹介した「一般的」と強調した例では、初期投資額を割り引くといったことは行わず、NPV関数で求めた生み出されるキャッシュフローの合計に、初期投資額をそのまま合計していました。
先日ご紹介したケースでは初期投資額は今すぐに支払う世界で、今回ご紹介しているNPV関数だけでNPVを求める例では初期投資額は今期末(実質的には1年後)に支払う世界なのです。
投資をするかどうか判断をしようという状態にしては、今回のケースは随分ゆるい世界のように私には思えます。
E6:E8セルには
「=PV($C$2,B6,,-C6)」
といった数式が入力してあり、2年目から4年目に生まれるキャッシュフローが計算されています。
キャッシュフローが生まれる時期も、先日のケースより1年後ろにシフトしています。
こういう世界ならば、NPV関数だけでNPVを求められるのです。一応。
日本で正味現在価値を求めるようなときに、こういう計算を採用している企業がどれくらいあるのか私にはわかりませんが、あまりないと言っていいんじゃないのかと想像しています。
日産自動車でキャッシュマネジメントなどを担当し、現在は財務戦略コンサルタントでらっしゃる石野雄一さんも著書「道具としてのファイナンス」(p.39)で、
NPV関数はNPVを計算するための関数ではなく、あくまでもPV(現在価値)を計算するためのものだということです。
したがって・・(中略)・・「初期投資額」を加えなくてはいけません。この点は非常に間違えやすいの注意してください。
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