教えることに関わっていると、学習教材の作成についても考えざるを得ません。
教材作成について考えると、私はキックバイクのことを思い出します。
(キックバイクという呼称より、ストライダーという商品名のほうがよく知られているかもしれません。自転車からペダルをはずした状態ともいえる、子ども向けの遊具です。)
キックバイクに乗っていると自転車に早く乗れる
ペダルのない自転車ともいえるキックバイクに乗っていた子のほうが、補助輪付き自転車に乗っていた子よりも、早く自転車に乗れるようになるという話があります。
自転車に乗るためには、ペダルをこぐという動作も必要ですが、それ以前にバランスを取れることが重要で、キックバイクに乗ることでバランスを取ることが上手くなり、より早く自転車に乗れるようになるという理屈です。
不完全な自転車で学習するほうが効果的
キックバイクと補助輪付き自転車を見直してみると、ちょっと面白い関係があるように感じます。
自転車を完全品と考えると、キックバイクは自転車の重要な機能の一部が欠落したいわば不完全品です。
完全品に補助輪がプラスアルファされている補助輪付き自転車で練習するよりも、不完全品で練習するほうが、自転車に早く乗れるようになるのです。
キックバイクは、自転車に乗るために必要なバランスを取ることに特化した学習教材ともいえ、最終的な形から見れば不完全な状態である教材のほうが、学習に有効だということです。
そして何より、自転車から見れば不完全品のキックバイクが、子どもにとって楽しい遊具になっているのが、うれしく感じます。
目標とする学習項目に応じて教材を作成する
学習項目が複雑なほど、最終的な学習目標をいくつかの段階に分解して、教材を用意するほうが、学習は容易になると考えています。
そしてどう分解するのが適切かは、学習者によって、けっこう変化すると実感しています。
ある学習項目を理解するためにはどんなキックバイクを用意すればいいのか、学習教材をつくるときにこれは何に特化したキックバイクだろうかを、考える必要があります。
そしてこの学習教材は、キックバイクのように楽しいものになっているか、考えつづけないといけないと、思っています。